福岡の薬院・六ツ角の交差点。大通りに面した建物の2階にあるイタリア郷土料理店「トラットリア デル チェーロ」。
どこか懐かしく、帰ってきたかのような深みのある木の温もりが感じられる店内。シェフがイタリアに行った時、最初に入った大好きなミラノのレストランのエッセンスが入っているという。
シェフの坂井裕伸(さかい ひろのぶ)氏は、福岡の老舗イタリアン「サーラカリーナ」に10年、銀座「エノテーカピンキオーリ」2年半、二子玉川 「インコントロ」や福岡で、レストランの立ち上げシェフを務め、創作を中心に据えて作っていた時代を経てきた。その後、イタリアへ渡る。約二年間に及ぶ滞在中に、北から南へ各地をまわり、食を通じて現地の人々に触れ、文化を知り、自分が表現すべきイタリアの料理にたどり着いた。伝統料理を、一人でも多くの人たちに伝えたいとの思いから、2004年2月に自身のお店をオープンさせた。
イタリア各地で出会った、自分達の故郷のものを大事にしている人たちの想いを込めた料理たち。手作りへのこだわりは、身体にいいもの、命の糧となる食事を提供しようというシェフの想いから。特に出汁は、素材の下ごしらえから始まり2〜3日かけて手間を惜しむことなく自然の美味しさを生み出すことに徹底している。
グランドメニューはコースからアラカルトまで豊富に揃う。仕入れはシェフ自らが毎朝行い、その日の最良の素材がメニューにとらわれることなく揃う。その日の旬の素材をメインに料理をするため、メニューをベースに季節を感じられるものを提供してくれる。たくさんのレパートリーの中から出てくる料理のお楽しみ感は、まさに母の手料理を思わせる。
イタリアの各州それぞれの個性と郷土愛が溢れる料理たち。地方ごとに根付いている文化と、奥深い伝統料理に出会える貴重なイタリア郷土料理店だ。
writer Chie