通りすがりでここに入ってみようという発想はまず浮かばない、そんな小さな探検心を燻ぶらせてくれる場所にあるのが「Bar文月」だ。
薬院駅から歩いて3分ほど、1階の店の提灯が煌びやかな脇に、静かに清廉と佇むエントランスが。そのまま通路を歩み、8段ほど上る。そっと引き戸をあけ、忍び込むように履物を脱ぐ。薄暗いなか一足ずつ木のぬくもりを感じながら階段を上がり2階へ。辿りついた和の趣深い家屋造りの店内は、包み込む灯りもやさしく、訪れるゲストをたちまちにリラックスさせてくれるだろう。
店主は阿南文平(あなんぶんぺい)氏。横浜の大学在学中に、バーの仕事に携わりその魅力に自然と引き込まれていった。卒業後は関東でバーテンダーとして経験を積み、地元・福岡の地へ。生まれ育った福岡の「人」を改めて肌で感じとり、自分のバーを2012年7月に開店した。
ウイスキーを主軸に、自身が培ってきた経験の中から選んだのモノだけを揃える。銘柄も数も限定されるため、メニューはなし。ジンやアブサンテなど、長い歴史をもち世界の人々に愛飲されてきたその日だけの一杯をじっくりと味わおう。
カウンターで個室で、時に文学に浸りながら・・・同じ空間にいながらも各々の時間を愉しめるBar文月。古き良き日本家屋を感じながら、時を忘れて過ごせる場所として重宝したい。
writer Chie